関西学院大学 理学部化学科 重藤研究室

研究室に興味のある学生へ

重藤研究室が目指すもの

重藤研究室が目指すもの

 身の回りの物質―液体・溶液、結晶から私たちの体を形作る細胞まで―は分子から構成されており、その性質や機能は分子の相互作用によってもたらされています。当研究室は分子の姿と振る舞いを調べることにより、微生物とその集団が示す機能、ナノ制限空間という特異な環境中の液体構造、新しい太陽電池材料の物性などを分子レベルで解明する基礎研究を進めています。
 その目的のために当研究室が用いるアプローチは分子分光学です。分子分光学では、分子の情報は「スペクトル」という形で記録されます。これを私たち分光学者は「スペクトルは分子からの手紙」であると表現します。私がこの「分子からの手紙」に初めて触れたのは、学部3年の物理化学実験の選択実験で液体ベンゼンのラマンスペクトルを測定したときでした。以来、謎解きに似たスペクトルの解読とそこからわかる分子の世界の不思議に魅了され、研究を続けています。
 基礎研究は応用研究とは異なり、すぐ世の中の役に立つ研究であるとは限りません。今は応用研究が重視される傾向がありますが、分子分光学の巨人G. Herzberg(1971年ノーベル化学賞)は、基礎研究basic researchと応用研究applied researchのどちらが大切かという議論は不必要だとして、次のように言ったとされています[1]:

"… in my opinion there is only good and poor research … and good research always starts out as basic, but inevitably turns into applied research."

当研究室ではHerzbergの言うgood researchを目指します。

[1] H. H. Mantsch, J. Mol. Struct. 834-836, 2 (2007).

研究室の生活

 4月に研究室に配属されてから夏くらいまでは、輪講や練習実験などを通じて分光学、とくに振動分光学の基礎を身につけます。有機化学分野と違って、物理化学では学部の講義で習う内容と最先端の研究の間に大きなギャップがあるからです。夏休み前あたりに教員と相談しながら研究テーマを決め、休み明けから本格的に実験をスタートします。先輩の指導を受けながら実験技術を習得し、自分独りで実験を行えるようになってもらいます。自分で考えて物事を進めることができる(independent thinkingができる)人は、研究者になっても化学とは関係ない仕事に就いても活躍できる可能性が高いです。当研究室では日々の研究指導を通じて、そのような人材の育成を心がけています。

進学/就職

 学部卒で就職希望の学生もやる気があれば大歓迎です。しかし、その場合には実質的な研究期間が半年程度ということになり、一定の成果を出すため単純な研究テーマになってしまう可能性もあります。より面白い研究テーマを深く掘り下げ、十分な研究を行うにはやはり大学院への進学が望ましいと言えます。
 「物理化学、とくに分光学の研究室を出て、どんな就職先があるの?」という人も大勢いることでしょう。主な就職先としては、化学メーカーや製薬会社の分析・解析部門があります。分光学は科学捜査や法医学にも応用できるので、警察の研究所への就職も可能です。競争力の高い製品を開発するには、最先端技術を用いた解析が不可欠です。振動分光による高分子の構造解析、顕微ラマン分光による皮膚の分析、ラマン分光イメージングによる錠剤のスクリーニングなど、当研究室で修得できる技術や物の考え方を活かせる企業は、実はたくさんあります。

フレックスタイム制

 基本的にコアタイムは設定していません。常識的に10:00〜18:00の時間帯は研究室にいるべきだとは思いますが、実験のない日は早めに切り上げたり、逆にまとめてデータを取るときには研究室に泊まり込んだり、自分のペースで研究してもらって構いません。研究時間のセルフマネジメントは、私の出身研究室(東大理学部化学科・浜口研究室)の方針を踏襲したものですが、多くの物理化学系研究室の伝統だと思います。ちゃんと研究が進んでさえいれば(ここが大事!)、何時まで研究室に残っているかは本質的な問題ではありません。

研究報告・輪講

重藤研究室風景

 毎週1回、研究室全体で行う研究報告会と輪講は非常に重要です。研究報告会では毎回2人ずつ、研究成果をまとめて発表します。自分の研究結果を皆で議論するだけでなく、他のメンバーの報告に対する議論にも積極的に加わることで視野を広げることができます。輪講では、化学科の学生に少々難しいですが、J.J. Sakuraiの名著『現代の量子力学』に挑戦しています。高度な研究を行うためにはその土台となるしっかりとした基礎力が必要です。そのほか、卒研生を対象とした勉強会を開いて、振動分光学の基礎と英語論文の読み方を直接指導します。
 私は9年間台湾、アメリカで研究を行った経験があるため、研究室の国際化や学生の科学英語スキルの向上にも力を入れています。2016年7~8月には日本学術振興会サマー・プログラムのサポートを受けてオレゴン州立大学の大学院生が重藤研に滞在して実験を行いましたし、2016年度から国際修士プログラムのインド人学生が1人在籍中です。さらに、2018年度からは、台湾出身のTsung-Han Liu博士と一緒に研究を進めており、国際色豊かな研究室を目指しています。

学会発表

 当研究室では学生の国内・国際学会での発表を奨励し、旅費の補助を行っています。修士課程の学生の場合、修了までに一度は国際学会で発表することを目指します。重藤研1期生からすでに、歴史ある学会でポスター賞を受賞した学生も出ています。5月下旬の日本分光学会、6月末~7月初めのTISRS/TARS Summer Camp@台湾、9月中旬の分子科学討論会、3月下旬の日本化学会年会にはなるべく多くの学生が参加・発表できるよう皆で頑張っています。

生きた細胞を分光学で観るような、皆さんが学部の講義で耳にしたことのない最先端の物理化学の研究にチャレンジしてみたい人はぜひ重藤研究室へ!

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