最近の研究成果

強発光性白金(II)錯体の多段階単結晶ー単結晶相転移とベイポクロミズム

https://doi.org/10.1002/chem.202201461

2022年4月21日

強発光性を示す白金(II)錯体に対して蒸気応答性を検討したところ、単結晶性を維持したまま水分子の吸脱着(単結晶-単結晶構造転移)が起き構造変化に対応し、発光色が青色から黄緑色に可逆的に変化しました。また、in-situ 単結晶X線回折により水蒸気吸着が二段階で起きていること及び中間体の結晶構造についても明らかにしました。

 

凍ったり融けたりする発光スイッチ材料を開発

http://doi.org/10.1002/adom.202270028

2022年2月12日

北海道大学大学院理学研究院の吉田将己助教,小林厚志准教授,関西学院大学生命環境学部の加藤昌子教授(兼任:北海道大学大学院理学研究院 名誉教授・客員教授),タルトゥ大学工学研究所のベルネル・サースク氏らの研究グループは,北海道大学大学院情報科学研究院の村山明宏教授らと共同で,加熱すると簡単に融けて膜になり,自由に発光をON/OFFできる新たな白金錯体*1材料を開発しました。
光る金属錯体は,省エネルギー型ディスプレイの鍵になる有機ELや,発光で酸素濃度や外部刺激を検出するセンサーなど,次世代の光技術を支えるとても重要な分子材料です。しかし,このような光る金属錯体を膜化して大面積ディスプレイやパネルを作成しようとすると,多くの場合,高温や高真空,または多量の有機溶媒を必要とするなどの問題がありました。
そこで研究グループは,明るく光ることで知られている白金錯体の融点を下げることで,この問題の解決に取り組みました。実際に,今回研究グループが開発した光る白金錯体は53℃という低い温度で融けるため,家庭用ドライヤーの熱でも融けて簡単に薄い膜になります。さらに,この錯体は融けたり凍ったりすることで,発光が消えたり復活したりすることもわかりました。これを活用することで,引っかいた部分が凍結して光るという,力学刺激を「見える化」する膜を作ることに成功しました。この成果はディスプレイの簡単な作成に繋がるのみならず,周りの環境や刺激を「見える化」する光学センサーなど様々な材料への応用展開が期待できます。
なお,本研究成果は,2022年2月12日(土)公開のAdvanced Optical Materials誌に掲載されました。

http://wwwchem.sci.hokudai.ac.jp/~cc/category/results/

ベイポクロミック錯体の新展開:機能や構造の協同現象レビュー

J. Photochem. Photobiol. C 2022, 51, 100477.  

2022年01月06日

ベイポクロミズム研究の最新動向をまとめたレビュー論文を発表しました。蒸気応答して色や発光色の変化を示すとともに、伝導性や磁性などとの物性と連動した系や単結晶ー結晶相転移が起こる系など興味深い系を紹介しています。本論文を含めて一連のレビュー論文が、Journal of Photochemistry & Photobiology C: Photochemistry Reviews誌に「ソフトクリスタル特集号」として組まれました。

集積発光性白金(II)錯体における蒸気誘起結晶化挙動の超高解像度顕微鏡観察

J. Phys. Chem. C 2021, 125, 21055−21061

2021年9月17日

メタノール蒸気に応答して明瞭な赤色発光を示す集積発光性白金(II)錯体、[Pt(CN)2(H2dcbpy)] (H2dcbpy = 4,4’-dicarboxy-2,2’-bipyridine)におけるベイポクロミック挙動を、超高解像度顕微鏡で詳細に観察することに成功しました。これは、東京大学生産技術研究所の石井和之教授との共同研究です。蒸気に応答して、アモルファス状態から蒸気分子の侵入により表面から内部へと結晶転移する様子が、発光を追跡することにより明らかになりました。

白金間距離の精密制御による幅広い3MMLCT発光色制御

Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 18723–18730.

2020年7月14日

N-ヘテロ環状カルベン(NHC)を有する中性白金(II)錯体に対し、置換基の嵩高さを系統的に変化させることで結晶中での白金間距離の精密制御に成功しました。この精密制御と適切なπ系を持つ配位子の選択により3MMLCT発光としては珍しい黄緑色発光に加え青色の3MMLCT発光を初めて実現し、その結晶構造と発光特性の温度依存性から発光特性を詳細に検討しました。同一の分子骨格を維持したまま強発光性と幅広い発光色制御が可能であることを示した今回の結果は、3MMLCT発光の優位性を再認識させる結果です。