研究概要

当研究室では、環境変化や刺激に応答して、発色・発光や、その他の物性が連動して変化するクロミック金属錯体の開発を行っています。特に、結晶の三次元秩序構造を保持したまま、弱い刺激に応答して柔軟に構造変化しうる「ソフトクリスタル」の学理と光機能導出に取り組んでいます。

アプローチ

アプローチと目標

Approach 1 デザイン・合成
光機能性金属錯体を創る(デザイン、合成)

Approach 2 発光とクロミズム
発光(ルミネッセンス)特性や刺激応答色変化(クロミック特性)を調べる

Approach 3 構造と光機能
分子構造や結晶構造解析から機能を探る

目標
光が要となる機能性金属錯体の開発

Development of metal complexes having photofunctionalities

研究テーマ 1

発光性金属錯体を活用したスマートソフトクリスタルの環境応答制御と機能化

水晶やダイヤモンドのように、結晶は硬くて安定な物質というのが一般的なイメージです。一方、私たちが研究対象にしている「ソフトクリスタル」は、規則正しい結晶構造・周期構造を持つ安定な構造体でありながら、蒸気にさらす、こするなどの極めて弱い刺激で発光や光学特性などの「目に見える」性質が変化するという特徴を持っています。

当研究室では、金属間d-d相互作用や有機分子間相互作用、水素結合等を駆使することで、様々な刺激に応答するソフトクリスタルの創製を行っています。特に、蒸気や機械的刺激に応答して色や発光挙動が変化する集積発光性クロミック白金(II)錯体の構築と機能導出をはかります。また、刺激に応答するメカニズムの詳細な解明や、センサーや光デバイス等への応用も指向し、新学術領域研究「ソフトクリスタル」の研究者とともに積極的に共同研究を展開しています。

参考)https://www.softcrystal.org/

多孔質有機シリカ上へと担持された白金(Ⅱ)錯体の迅速ベイポクロミズム
金属間相互作用で赤から青まで発光色が自在に変わる集積発光性白金(II)錯体

研究テーマ 2

特異な発光特性を示す新奇発光性金属錯体の創出と解明

こすると光るトリボルミネッセンスや光るイオン液体など、金属イオン、配位子、対イオン、包接分子などの協奏が織りなす金属錯体の新たな性質を引き出すことにより、これまでの常識を打ち破る新奇発光性金属錯体の開発と原理の解明に取り組みます。また、資源の有効活用が叫ばれる現代社会において、省エネルギー化や希少物質の代替は非常に重要な課題です。本研究室ではこのような観点から、優れた発光特性を有する貴金属錯体だけでなく、より安価かつ地球上に豊富に存在する3d金属錯体にも注目し、銅(I)錯体をはじめその他の3d金属錯体を用いた新たな強発光性錯体の創出も目指します。

本研究室ではこのような観点から、優れた発光特性を有する貴金属錯体だけでなく、より安価かつ地球上に豊富に存在する3d金属錯体にも注目し、銅(I)錯体をはじめその他の3d金属錯体を用いた新たな強発光性錯体の創出も目指します。

巨大カチオンに囲まれた空間で強発光を示す白金(II)錯体
蒸気交換により発光色を変えるベイポクロミック銅(I)錯体