学生・教員の声
数理科学科
世の中の諸現象を考察する際に、司令塔の役割を果たす数学
数理科学科 千代延 大造 教授
確率論とは、偶然性の中に潜む法則を見つけること。その原点は、コイン投げなど賭け事の研究にあります。そうした簡単な確率のモデルが、物理学や工学といった自然科学や経済・金融・保険数理などさまざまな分野において、重要な考察のモデルを提供してくれます。例えば、水は低温では固体(氷)、高温では気体(水蒸気)であるという事実についても、水の分子一つ一つがコイン投げのように偶然に支配されて動いているというモデル化をすることにより、考察することができます。このように数学は、その抽象性ゆえに、世の中の数理がからむあらゆる現象を考察する上での司令塔となります。さまざまな分野に応用され、そこからのフィードバックによって理論の研究が進み、また別の分野に応用される。そうした活力のある学問です。
ドーナツとコーヒーカップが同じ・・・図形を新しい視点でとらえる
物理学科 数学専攻 4年生 上村井 英子
愛知・名古屋市立向陽高校出身
私は、紐の結び目を数学的に表現する「結び目理論」のベースとなる「位相幾何学」について研究しています。図形を長さや角度、面積でとらえるのではなく、点や線でとらえようとする位相幾何学の世界では、ドーナツとコーヒーカップが同じものとして扱われます。図形を今までと違った視点で分類し、そのメカニズムを紐解いていくという面白さがあります。
物理学科
基本原理から複雑な現象を理解し、応用分野を支え続ける物理学
物理学科 澤田 信一 教授
物理学の面白さは、基本的な原理を組み合わせていくことで、複雑な物質の性質や現象が理解できるところにあります。その解析手段としてコンピュータ技術を活かすことで、物理学の分野は飛躍的に発展しました。私の専門は、原子・分子の性質から物質の性質について説明する物性物理学。その中でも特にコンピュータを用いた理論的研究を行っており、数学や量子力学、統計物理学などの知識を基にして、さまざまな物質の性質を解明していきます。近年、応用分野への注目も高まっていますが、応用を支えるのは基礎科学。例えばコンピュータ産業を生み出した半導体技術のもとになったのは、物理の一分野である量子力学です。今後も現代文明を支える学問として、物理学が重要な位置を占めることに変わりはないでしょう。
双極子の動きをシミュレーションし、固体の磁性と物性の関係を探る
物理学科 4年 永幡 裕
大阪・府立西寝屋川高校出身
水が固体・液体・気体と変化するように、分子集団は、熱で乱れようとする力と安定した状態になろうとする力の均衡によって、その性質を変えてしまいます。私は、分子でできている磁石である電気双極子の集まりを、動的にシミュレーションすることで、物性の性質が変化する過程を解析しようとしています。
化学科
ナノサイズの物質の性質を解明。自然界の秘密を知り、応用に活かす
化学科 玉井 尚登 教授
物質をナノメールサイズまで小さくすると、色や融点、発光状態が変化して、大きなサイズでは見られなかった新しい現象が見えてきます。私が研究しているのは、小さなナノメートルサイズの物質の性質について、形やサイズを特定しながら解明する「メゾスコピック化学」と、超高速現象の化学反応初期過程を1兆分の1秒よりもさらに短い時間分解能で解明する「フェムト秒化学」。これまでにない現象が見つかったときや、オリジナルの方法でナノサイズの物質を作ることができたとき、そして新しい測定法がうまくいったときなどは、純粋に喜びがこみ上げてきます。ナノサイズの物質はさまざまな応用が考えられるため、この研究が社会還元されれば、自然界の秘密を知る喜びとともに二重の喜びが感じられます。
微生物に分解される高分子を研究し、環境改善への道を切り開く
化学科 4年 舟津 良亮
兵庫・関西学院高等部出身
生分解性高分子の共重合体について、その物質や熱挙動を研究しています。生分解能高分子は微生物によって分解され、二酸化炭素の増減もないことから、環境にとって非常に素晴らしい材質であるといえます。この研究で物性を明らかにすることにより、生分解性高分子が材質として世の中に浸透すれば、環境改善のひとつの道を切り開けるでしょう。
生命科学科
生命の謎を分子レベルで解明し、病気の予防や社会に貢献する研究を
生命科学科 今岡 進 教授
21世紀は、治療の医学から予防の医学へ移行する時代。その予防医学に役立つのが、細胞の応答メカニズムに関する研究。低酸素状態とがん・心筋梗塞・脳梗塞などの関係や、車の排気ガスと花粉症の関係、環境ホルモンが脳神経発達に及ぼす影響などを研究することで、原因分子を明らかにして予防策や治療法を考えるヒントを得ることができます。謎に満ちた生命を扱う生命科学は、目に見えない生体分子の営みやネットワークを解明する学問です。身近なことへの疑問を出発点として研究に熱中するうちに、新しいものを発見できるでしょう。その発見を病気の予防など、世の中の役に立つ研究につなげてください。趣味のための研究ではなく、社会への貢献という責任感を持ち、10年、20年先のことを見据えて研究に取り組んでほしいと願っています。
超好熱菌の耐熱性酵素を研究し、産業界に新たな風を吹き込む
生命科学科 4年生 佐野 創太郎
兵庫・関西学院高等部出身
超好熱菌という、80℃以上の高温環境に適応した微生物の研究をしています。超好熱菌の持っている耐熱性酵素は熱に強くて頑丈なため、効率的な触媒反応を期待され、産業に応用されています。私の研究目的は、超好熱菌から新たに有用な耐熱性酵素を取得し、その機能解析を行うこと。研究の成果が直接、産業に結びつくため、大変やりがいがあります。
情報科学科
携帯やデジカメなどを動かすシステムソフトウェアを開発
情報科学科 石浦 菜岐佐 教授
携帯電話やデジカメ、テレビ、家電・・・これらを動かしているのは、内部の超小型コンピュータシステムです。超小型といっても、高性能のマイクロコンピュータに気が遠くなるような規模のソフトウェアが搭載されています。私が研究しているのは、このようなシステムを作るためのシステムソフトウェアの開発。企業と共同で研究したり、世の中に公開したりします。自分たちの作ったプログラムを実際に使ってもらえるのは、プレッシャーでもあり楽しみでもあります。全く同じ機能のプログラムでも、書き方に美しい/汚い、上手い/下手があります。一見小さなことに思えますが、大規模なソフトウェアを作るときは、これが極めて重要なこと。この違いや重要性を理解すると、ソフトウェア開発の面白さが分かってくると思います。
電子マネー取引をもっと安全で快適なものにする プログラムを検証
情報科学科 4年生 世登 恵梨
大阪・府立千里高校出身
電子マネー取引の流れを実際にプログラム化して、SPINというモデル検査ツールを使って、正しい動きをしているか、安全性が保障できるかといったことを確かめています。例えば、どんな詐欺があるか考え、自分の作ったプログラムが詐欺に気づき、犯罪者を割り出してくれるのかを検証。実際の問題を想定して、実用的な研究に取り組んでいます。
人間システム工学科
人間とは何か・・・根源的な問いに挑み、音声で対話するコンピュータを研究
人間システム工学科 川端 豪 教授
地球上で唯一人間だけが言葉を話し、相互に理解し合うことで協調的な社会を実現しています。私の研究テーマは、人間と音声で自然に会話するコンピュータを創り出すこと。言葉を聴き、話すコンピュータの研究は、「人間とは何か」という問いに真っ向から取り組むことに他なりません。この根源的な問いへの答えを情報科学の視点からとらえ、コンピュータに会話させるためにはどうすればよいか、どのような会話が人間にとって快適かを探求しています。対話するコンピュータの実現に向けて、音声認識や音声理解、音声対話といった要素技術を総動員し、洗練させながら、これらの要素技術を複合する枠組みを提案。さらに、人間の対話行動の観察、心理計測・生理計測による「対話モデル」評価法の確立をめざしています。
緊急車両の衝突事故を減らすため、LED発光パターンの視野性を検証
情報科学科 3年 東 泰宏
兵庫・関西学院高等部出身
救急車など緊急車両のパトライトをどのような発光パターンにすれば、周囲の人がいち早く緊急車両に気づけるかという視野性の評価に取り組んでいます。実際に多発している事故を軽減することを目的として企業と共同研究を行っており、近い将来、自分たちが評価した発光パターンで緊急車両のLEDが点滅することになると考えただけでもワクワクします。
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