タンパク質と水の相互作用

  タンパク質の立体構造を安定に保つために水の役割を無視できません。前頁のリボン図ではタンパク質は柔らかそうに見えますが、実は分子内部は結晶と同じくらい密に原子がパッキングされています。左の図は原子半径を実際の大きさにとってリゾチームを描いたものです。タンパク質内部からは水が排除され、明確な分子表面が存在することが分かります。赤い原子の集団はタンパク質表面に結合したバクテリアの細胞壁の一部です。タンパク質表面には生物機能を果たすための種々の官能基が適切に配置されています。タンパク質の表面はさらに溶媒の水分子に被われています。
右の図はその水分子を描いたものです。タンパク質はその表面で水分子と相互作用して立体構造を保っています。それが壊れてポリペプチド鎖がほどけ始めると、タンパク質内部に水分子が侵入してランダムコイルの状態となってしまいます(アンフォールディング)。タンパク質と水が接触する部分では水のHとタンパク質主鎖のNH基の水素が交換します。NMRスペクトルを測定すると、この交換反応を原子レベルの分解能で観測することができます。
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