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X線天文学研究室

CCDカメラでX線が観える?

CCDは、携帯電話やデジタルカメラとして私たちに大変身近な存在で、レンズで集光して可視光(目に見える光)の画像を捉えるデバイスです。このCCD、レンズを外すと実は人間には見えないX線を観ることができるのです。さらに、X線光子一つ一つのエネルギーを知る(分光する)ことまでできます。ただし、X線光子が作る電気信号は微弱なため、X線分光をするためには、電気的な雑音を十分に小さくする工夫が必要です。実験室で工夫を続けながらX線の撮像と分光の特性を調べる必要があり、ここから研究が始まります。

X線放射が見せる激しい宇宙

可視光で明るく輝く太陽は表面温度6000度です。X線はとても波長の短い電磁波で、物質(または天体)の温度が高くなるほどそれから出る電磁波の波長が短くなるので、X線で明るい物質は、数百万〜数千万度の高温になります。宇宙には、X線で明るい天体がたくさんあります。X線で宇宙を観測することで、超高温の激しい宇宙を調べることができます。

星内部では核融合により様々な元素が生成され、太陽よりずっと重たい星の場合、最後に超新星爆発を起こします。爆発エネルギーにより、星の中心部は圧縮されて中性子星やブラックホールになり、外部は吹き飛ばされて高温プラズマ(超新星残骸)が数光年の球殻となってX線で明るく輝きます。また、高温下で電離した物質は、元素特有のX線(特性X線)を放射します。X線の画像と分光ができれば、シリコン、鉄などの元素がばら撒かれる様子を調べ、爆発時の物理環境、爆発前の元素生成量を探ることができ、元素の起源を解明したいと思っています。ここで、CCDなどの撮像・分光検出器が活躍します。

図:超新星残骸のX線画像の例。中心の白い点が中性子星、衝撃波で加熱されたプラズマがX線で輝く。
©NASA/CXC/MIT/UMass Amherst/M.D.Stage et al.

人工衛星に観測装置を載せよう

宇宙からのX線を捉えるために、観測装置を大気圏外に持っていく必要があり、私は、観測装置を搭載した人工衛星の開発・製造に貢献してきました。現在活躍中のX線天文衛星では、X線CCDカメラが焦点面検出器として活躍しており、次期X線天文衛星ASTRO-H(JAXA:宇宙航空研究開発機構)にもX線CCDカメラ(SXI)が搭載される予定で、現在様々な試験を実施中です。打ち上がったあとの観測データがとても楽しみです。 大学の実験室でCCDを始めとした半導体検出器の開発がしたい実験が大好きな人も、世界の衛星データを緻密に解析し、激しい宇宙の物理現象を解きたい人も、是非一緒に研究しましょう。