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高エネルギー宇宙物理学研究室 (楠瀬正昭)

宇宙の色々な天体(星、銀河など)や様々な天体現象(超新星爆発など)を観測できるのは、電波からガンマ線に至るまでの電磁波や粒子(原子核、ニュートリノなどの宇宙線)がそれらの天体から地球にやって来るからです(最近ではアインシュタインの一般相対論で予言される重力波を検出しようという試みもなされています)。そこでこの電磁波などがどのようにして生み出されるかを理解できれば、その天体でどのような事が起こっているか(天体の物理状態)を知る手がかりになります。

この研究室では、X線やガンマ線のような高エネルギー光子が生み出される天体として、主に活動銀河核など、ブラックホール(以下、BH)を持つと考えられる天体について研究しています。そして特に、BHの周囲に形成される降着円盤の構造や、円盤を形成する高温プラズマの性質、さらにBH近くから吹き出すプラズマのジェットの性質を明らかすることを目指しています。

もう少し詳しい事:
活動銀河核は、銀河の一種ですが、中心部分から非常に大きなエネルギーを電磁波の形で放射しています。このエネルギー源として考えられているのが、BHへのガスの降着という現象です。活動銀河核のBHの質量は太陽の質量の1億倍前後です。降着というのは、単純に言えばガスがBH付近に落下することですが、一般には、ガスはBHの周囲に円盤(降着円盤)を形成します。この円盤内部で、ガスは重力エネルギーを運動エネルギーに変換し(BHに落下)、さらに様々な物理過程(これが何かというのが、ひとつの研究テーマ)によって、ガスの内部エネルギーとなり、十分加熱されて電離します(プラズマ状態)。さらに、このあと以下のようなことがおこります。

  1. 磁場や衝撃波のためガスの一部は極めて大きなエネルギーをもつ。
  2. プラズマが電磁波を放射する。
  3. 一部のプラズマはBHに落下せず、ジェットとなり吹き出す。
  4. ジェットは光速に近い速さですすみ、超高エネルギーガンマ線をだす。

これらの現象がどのように起こるかが、現在の研究テーマです。これらを調べるため、また観測データを物理的に説明する理論をつくるため、様々な物理過程を取り入れた計算コードを開発し、コンピュータシミュレーションを行なっています。

また、活動銀河核だけではなく、私達の住む銀河系の中心にも太陽質量の100万倍程度のBHがあることが観測的にほぼ確実になっています。この銀河系中心のBH周辺は活動銀河核に比べると活動性がかなり弱いのですが、それでもX線やガンマ線が観測されています。そこで銀河系中心のBHも研究テーマの一つになっています。

銀河系の中心は、活動性が弱い代わりに活動銀河核に比べてはるかに地球に近いので、観測的には詳細な情報が得られる可能性が大きいと思われます。