■研究について述べます.
独立変数が複数ある関数を考えます. xy や sin ( x2 + y3 ) などです. x で微分することも yで微分することもできます.この場合, 単に微分といわずに偏微分といいます. ある関数を偏微分したものを偏導関数といいます.偏導関数たちの間の関係式を偏微分方程式といいます.偏微分方程式の性質を調べるのが偏微分方程式論です.
複素数に複素数を対応させる複素関数を考えます.複素関数の性質を調べるのが複素解析です.複素関数論ともいいます.略して単に関数論ということもあります.
私は複素解析を使って偏微分方程式の性質を調べるという研究をしています.
最近は微分方程式と漸化式を混ぜたもの (微分差分方程式) の研究もしています.
研究のネタは物理の本で見つけることもあります.また,応用数理の雑誌に論文を発表することもあります. 面白いものは何でも取り入れるようにしています.
We consider the Neumann version of the spherical mean value operator and its variants in the space of smooth functions, distributions and compactly supported ones. Surjectivity and range characterization issues are addressed from the viewpoint of convolution equations.
We solve the analytic Cauchy problem for the generalized two-component Camassa-Holm system introduced by R. M. Chen and Y. Liu. We show the existence of a unique local/global-in-time analytic solution under certain conditions.
We solve Cauchy problems for some μ-Camassa-Holm integro-partial differential equations in the analytic category. The equations to be considered are μCH of Khesin-Lenells-Misiolek, μDP of Lenells-Misiolek-Tiglay, the higher-order μCH of Wang-Li-Qiao and the non-quasilinear version of Qu-Fu-Liu. We prove the unique local solvability of the Cauchy problems and provide an estimate of the lifespan of the solutions. Moreover, we show the existence of a unique global-in-time analytic solution for μCH, μDP and the higher-order μCH. The present work is the first result of such a global nature for these equations.
focusing な離散非線型シュレーディンガー方程式に非線型鞍点法を適用して,時間無限大における解の漸近挙動を求めました.多重ソリトンに摂動がついた形になります.
ある種の超幾何型多項式の漸近展開について調べました.中井さんの修士論文を基にしています.
ある種の行列値関数の因数分解について調べました.関数解析を使って関数論の問題を解きました.離散非線型シュレーディンガー方程式と関係があります.
defocusing な離散非線型シュレーディンガー方程式に非線型鞍点法を適用して,時間無限大における解の漸近挙動を求めました.
defocusing な離散非線型シュレーディンガー方程式に非線型鞍点法を適用して,時間無限大における解の漸近挙動を求めました.上記の II はこの論文の続きです.
下記の Nonlinear Cauchy problems with small analytic data (2006) を発展させたもの.非線型項に絶対値を含むものも扱えるようになりました.
熱方程式に対する初期値・境界値問題の逆問題に関して, ラプラス変換と Phragmen-Lindelöf の定理を用いて, 春木・磯両先生が面白い結果を出されていました. 私がこの種の道具に強いわけではありませんが,耳学問で多少のことは知っていたので, その方面で何か新しいことはできないかと考えてみました.結局, 昔勉強した超関数の知識が役立ちました.
ある種の非線型波動方程式について, 主要項が対数関数で表されるような特異解を構成したことがあります (Proceedings of the American Mathmatical Society 2007).この仕事を見た田原氏が, 小林隆夫先生(東京理科大)の仕事との関係に気づかれました. 結局, ある種の方程式について対数関数に単項式を掛けた形の主要項を持つ特異解を構成できました. ほぼ任意の非特性面に沿ってこのような解が構成できます. これは m 階方程式に関する一般論なので, 例はたくさん作れます. 証明には Kichanassamy-Littman (独立して小林先生)のアイデアである Fuchsian Reduction を用いました.すなわち, 元の方程式をフックス型偏微分方程式に帰着して考察しました.
小さい初期値をもつコーシー問題の実解析解の存在時間を下から評価しました. 適当なバナッハ環を構成して縮小写像の不動点定理を使いました. バナッハ環の構成には優級数を使います. この方法は,私は Wagschal 先生の論文で勉強しました.いったいこの方法がどのくらい古くからあるのか気になっていますが, まだ調べていません. (最初は Gevrey あたり? )
小さい初期値という定式化は私の身の回りでは誰も使いませんが, フーリエ解析を使って非線型波動方程式や非線型シュレーディンガー方程式を調べている人たちの話にはしょっちゅう出てきます.
Gourdin-Mechab の論文を見て, 実解析カテゴリでも小さい初期値が扱えることを知り, 非線型波動方程式を含むあるクラスについて考察しました.
n 変数調和関数を指数関数の重ね合わせで表す公式(積分表示式)を導きました. 昔からあってもよさそうな話ですが, なぜか誰もやっていませんでした.私は Berndtsson-Passare などの多変数関数論の論文に刺激されてこの問題を考えました. 積分表示式は微分形式で書きます.
これ以前に3変数の場合に限って書いた論文がありました.そのときは定式化が良くなかったので手計算ではどうにもならず,Maple を使って何とか計算しました. 論文には「Maple の difforms パッケージで計算したらこうなる」と書いてJMSJ (日本数学会のジャーナル) に投稿したら無事掲載されました(2002年).
JMSJ 2004年の論文では,
球面のタンジェント・バンドルを使ったら見通しが良くなって,手計算だけで証明できるようになりました.
確定特異点型常微分方程式を多変数化したフックス型偏微分方程式は私の主な研究テーマです. この論文は2階線型のフックス型偏微分方程式を複素領域で考えたものです. 特性曲面の周りで分岐する解を構成しました. 解は級数の形で与えられ, 各項は, 非有界な係数をもつ微分形式をm次元単体の上で積分した値です. 普遍被覆空間や変位レトラクトなど,トポロジーの道具を使います. Claude Wagschal, 小林隆夫両先生の影響を強く受けています.
片岡清臣先生の指導のもとで書いた博士論文です. 複素領域でmicrodifferential operators の計算をしました.評価の技法を身につけようと思って浜田雄策先生, Wagschal先生 らの論文を読んだところ大変面白く, 研究テーマは複素領域の偏微分方程式に移って行きました.
特異性 (解析的波面集合) の分岐については,片岡セミナーの後輩である千葉康生さんが研究して,かなり詳しいことが判ってきています.
数学者の業績を調べるにはアメリカ数学会のデータベース (レビューを含む) であるMathSciNet が便利です. 関学神戸三田キャンパスのネットワークの任意の場所から見られると思います (IEを推奨します). 有料サービスなので, 契約していないところからは見られません.
MR Lookup というのもあります.無料ですが,あまり便利ではありません.
他に Zentralblatt MATH というのもあります.本来は有料サービスですが, 機能制限つきでよければ無料で使えます.