A. 半導体ナノ構造体の光物性
1.イントロダクション
一般的に存在する物質は電子のような微小的な観点からみると、xyz全ての軸に対して無制限に動く事ができる。このような物質をバルクとよぶ。この状態においては、電子状態は価電子帯と伝導帯の二つのバンド構造をもち、その間のバンドギャップは物質固有となる。しかし、物質のサイズをナノメートル(10-9乗)サイズまで小さくすると、物質内に電子が限られた波長でしか存在できなくなるため、電子状態が離散的になり、サイズによってバンドギャップが異なり、バルクとは全く異なった物性を示す。この現象は量子サイズ効果や量子閉じ込め効果と呼ばれている。例えば、金はバルクでは金色であるが、ナノメートルサイズまで小さくすると、サイズによって青色や赤色など様々な色の変化をする。
同じ物質でもサイズによってことなる吸収、発光特性をもつ物質を調製できることから、これらは蛍光標識などに実際に応用されており、それ以外にもオージェ効果、逆オージェ効果などバルクとは全く異なる物性が近年多く観測されており、多くの研究が行われている。 |
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図1:量子ドットの電子状態 |
2.逆オージェ効果に関する研究
・逆オージェ効果とは??
バンドギャップの2倍以上のエネルギーを持つ光子を吸収して、複数のキャリヤーを生成する過程
アインシュタインの光電効果にあるように、一般的にはエネルギーの大小に関係なく一つの光子では一つの電子しか 励起することはできない。高エネルギーで励起した場合には、バンドギャップ以上の余剰エネルギーは内部緩和によって失われる。しかし、特定の物質においてバンドギャップの2倍以上のエネルギーで励起した場合、逆オージェ効果が起こり、バンドギャップ以上の余剰エネルギーを用いてもう一つの価電子帯の電子を励起する場合がある。この現象は、一つの光子から複数の電子(キャリヤー)を生成することができるので、太陽電池の変換効率の著しい増加などのエネルギー変換分野で非常に注目されている。逆オージェ効果は一般的なバルクの物質では非常に低い確率でしか観測されないが、2004年にKlimovらが初めてPbSe半導体量子ドットにおいて高い効率で観測したのをきっかけに、いくつかの他の物質においても観測された(ex.
CdSe, PbTe, Si etc…)。
現在我々は、今まで確認がされてきたCdSeやPbSeなどと同じU-Y化合物半導体であるCdTe量子ドットを用いて逆オージェ効果の観測に成功しており、これらのナノ構造体形状依存性、また温度依存性行うことにより、それらの閉じ込め効果や内部緩和との関係を調べている。 |
図2:逆オージェ効果の概念図 |
図2:逆オージェ効果の概念図 |
現在我々は、今まで確認がされてきたCdSeやPbSeなどと同じU-Y化合物半導体であるCdTe量子ドットを用いて逆オージェ効果の観測に成功しており、これらのナノ構造体形状依存性、また温度依存性行うことにより、それらの閉じ込め効果や内部緩和との関係を調べている。 |
・逆オージェ効果とは??
バンドギャップの2倍以上のエネルギーを持つ光子を吸収して、複数のキャリヤーを生成する過程
アインシュタインの光電効果にあるように、一般的にはエネルギーの大小に関係なく一つの光子では一つの電子しか 励起することはできない。高エネルギーで励起した場合には、バンドギャップ以上の余剰エネルギーは内部緩和によって失われる。しかし、特定の物質においてバンドギャップの2倍以上のエネルギーで励起した場合、逆オージェ効果が起こり、バンドギャップ以上の余剰エネルギーを用いてもう一つの価電子帯の電子を励起する場合がある。この現象は、一つの光子から複数の電子(キャリヤー)を生成することができるので、太陽電池の変換効率の著しい増加などのエネルギー変換分野で非常に注目されている。逆オージェ効果は一般的なバルクの物質では非常に低い確率でしか観測されないが、2004年にKlimovらが初めてPbSe半導体量子ドットにおいて高い効率で観測したのをきっかけに、いくつかの他の物質においても観測された(ex.
CdSe, PbTe, Si etc…)。
現在我々は、今まで確認がされてきたCdSeやPbSeなどと同じU-Y化合物半導体であるCdTe量子ドットを用いて逆オージェ効果の観測に成功しており、これらのナノ構造体形状依存性、また温度依存性行うことにより、それらの閉じ込め効果や内部緩和との関係を調べている。
3.低温における光物性に関する研究
低温における量子ドットの光物性については、SK法や有機溶媒中でのコロイド合成法によって合成された量子ドットにおいてよく研究がなされており、温度低下に伴った発光効率の著しい上昇や、発光寿命の増加すことなどが知られている。一方、水を溶媒としたコロイド合成法により合成したCdTe量子ドットは溶液を230K以下まで冷却すると発光が完全に消光されることが報告されている。これは、一般的には温度が上昇することによって発光が消光されるという現象とは逆の傾向が見られていることから、アンチクエンチング効果とよばれている。しかし、我々が合成した水溶性CdTe量子ドットでは、このような温度依存性はみられず、アンチクエンチング効果は観測されなかった。
アンチクエンチングは溶媒や保護剤などの量子ドット周辺の環境に依存している可能性があるため、現在我々は、異なる保護剤を用いて、量子ドットの周辺環境を変化させることによるアンチクエンチング効果の影響について調べている。
B. 貴金属ナノ構造体の光物性
1.金ナノロッド及び金ナノホールの顕微分光による研究
金属のナノ構造体では局在型表面プラズモンが励起され、電場の増強や閉じ込めといった興味深い現象が観測される。貴金属の薄膜に形成させたナノメートルサイズの円形開口を「金ナノホール」、ナノメートルサイズの金の延べ棒を「金ナノロッド」といい、レーザー顕微鏡を用いてこのような微小領域の光物性に関して研究を行っている。
今日までに、我々は共焦点顕微鏡を用いた過渡吸収ダイナミクスの測定において、10
-7オーダーのS/N比で金ナノロッドの振動ダイナミクスの観測に成功しており、現在ナノ構造体のダイナミクスに加えて、これらのナノ構造体によるプラズモン影響下における量子ドットとの相互作用についても研究を行っている。
Contents
物質をだんだん小さくしていくと、どんなことが起こるでしょうか?例えば半導体物質は、見た目は真っ黒な固体ですが、ナノメートル(10の-9乗
m)オーダーまで小さくすると、七色に光るようになり、他にもたくさんの特徴的な現象を示すようになります。それらの光物性は大きさやサイズに依存して変化し、また逆に言うと大きさ、形状により物性を制御することができます。これらはいったいどのようなことが起きているのでしょうか??
私たちは、半導体や貴金属のナノ構造体でどのような光化学が起きているのかを、フェムト秒パルスレーザーを使った時間分解分光により調べています。それぞれの研究テーマと簡単な研究紹介を書いたpdfを下に紹介します。
A. 半導体ナノ構造体の光物性
・半導体量子ドット、ナノロッド、ナノワイヤの光物性
・オージェ効果、逆オージェ効果に関する研究
・量子ドット、ナノワイヤの単一分光
・量子ドットの極低温度下における光物性
・DNAを用いた単一量子ドットのエネルギー移動過程の解明
B. 貴金属ナノ構造体の光物性
1.金ナノロッド及び金ナノホールの顕微分光による研究
2.金ナノ構造体のプラズモンダイナミクスに関する研究
3.銀ナノ構造体の顕微分光による研究
C. SiC, グラフェン、TiO2の光物性
1.SiCの表面構造、光物性に関する研究
2.グラフェンの光物性
3.TiO2の光物性および金ナノ粒子との相互作用に関する研究