平面上の円と(円と交わらない)直線があるとき,
直線の周りに円を1回転して得られる曲面がトーラス
(ドーナツ,浮き輪) である.
直線(回転軸)と円の中心の距離を a,円の半径を b とする.
回転軸を z 軸,円の中心は x 軸上の (a, 0) にあるとして,
トーラスのパラメータ表示(媒介変数表示)は,
x = (a +b cost )cosu,
y = (a +b cost )sinu,
z =b sint
により与えられる (パラメータ t, u は 0 から 2π まで動く).
下の一番左の図は a =1, b =1/2 として描いたトーラスの図で,
続く3つの図は回転軸と平行な平面でトーラスを切断した断面図である.
左から3番目の図では,切断面に現れる曲線はレムニスケートである.
一般の a, b に対しても,
回転軸に平行な切断面と軸との距離が b (回転する円の半径)
に等しいとき,
トーラスと切断面の交わりはカッシーニの卵形線になる.
(トーラスのパラメータ表示と平面 y = -b から t,
u を消去して,
カッシーニの卵形線の方程式(陰関数表示)が導かれる.) 下の図は,
a =1,b =0.4, 0.5, 0.6, 1
の場合にこうして得られるカッシーニの卵形線である.
円錐を平面で切ると2次曲線(放物線,双曲線,楕円)が現れる.
円錐の平面による断面 (conic section) はメナイクモス (BC350),
トーラスの平面による断面 (spiric section) はペルセウス (BC150)
によって最初に考えられたそうだ.
以上は [1] の5章「ドーナツの輪切り?」 を読んで,
2001年に作った Maple ワークシートをまとめたものである.
plottools パッケージの torus コマンドでトーラスを作り,
plots[display] コマンドで描く範囲を制限することにより切断面を作っている.
上の図はMapleプロットを Pov-Ray
形式で保存して Pov-Ray
で描画した.以下のような Maple コマンドを用いた.
with(plots):with(plottools): a := 1: b := 1/2: t := torus([0,0,0], b, a): display(t,scaling=constrained, axes=boxed, labels=[x,y,z]); display(t, view=[-a-b..a+b, -a-b..b, -b..b], scaling=constrained, orientation=[80,60]);
[1] では回転軸に平行ではない平面による切断も考えられている.
1. 山本芳彦 『実験数学入門』岩波書店, 2000.
2. ニーダム 『ヴィジュアル複素解析』培風館, 2002.
(2005年5月31日作成(2009年4月24日 修正して再公開))