この文章は大学1年生の微分積分の授業の配布プリントとして OpenOffice3.01 で作成したものを html 出力して若干の手を加えたものである.(pdf ファイルはこちら. OpenOffice の数式編集機能を使うのは初めてなので結構大変だった. html 出力すると数式がグレーっぽくなり見にくい.) これに関連して,フリーの数学ソフトウエア Geogebra を用いて, Javaを使ったインタラクティブなテイラー展開のページを作成した (指数関数の例と正弦関数の例). 授業期間が終了しても残しておくことにする. (7/4/09 追記)
関数とはの値に対して
の値がただ1つ定まる規則のことだが,
微分や積分など公式を使って式の計算をしていると,
「値」のことを忘れがちである.ある点の近くでの関数の値の大きさに注目し,
グラフや数値の計算を通してテイラーの定理の理解への第一歩となることを目指す.
例1
の
の近くでの値を考えよう.
のグラフは右の図のようになる.
の値が0に近いと
より
は小さく,
,
は順に更に小さくなる.
したがって,
を低い次数で打ち切った多項式の値は,
の近くでは
の値に近いはずである.実際,
のグラフは下図の通りになる(
のグラフは点線で表示).
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一番左のは
における
の接線である.
の近くでは,
と
の違いはグラフからは読み取りにくいが,
に比べると
に近づいているのがわかる.
たとえば,
における値を比べてみると,
のように次数を上げると値が近づいていくのがわかる.
の
における接線の方程式は,
だから,
の係数,つまり
の定数項
と1次の係
数
は
により与えられていることがわかる.
2次以上の項の係数も微分と関係がある.
一般の4次式で考えよう.これに
を代入すると,
がわかり,
に
を代入すると
がわかる.さらに微分して
を代入することを続けていこう.
を
回微分したものを
と表す.
に
を代入すると
,2次の係数は
で与えられる.
に
を代入すると
,3次の係数は
で与えられる.
だから,4次の係数は
で与えられる.こうして,4次多項式
は
のように係数を微分を用いて表すことができることがわかった.
例2 多項式でない関数の例として指数関数
をとりあげよう.
だから
における
の接線の方程式は,
で与えられる.
と
のグラフは右図のようになる.
の近くで
と
の値が近いことがグラフからわかる.
例1にならって,から
次多項式
を作ろう.より,
となる.作り方から,
が成り立つ.
のグラフは下図のようになる(
のグラフは点線で表示).
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のように次数を上げると値が近づいていくのがわかる(小数点以下4桁の近似値).
の近くで,
と
が「近い」ということを別の形で見てみよう.
のとき,
となる.
最後の等号は
における
の微分係数が
1
であることを表している.
のとき,
であり,
となる.
これは
において
が連続であることを表している.
のとき,ロピタルの定理より,
がわかる.一般のの場合もロピタルの定理を繰り返し使うと,
であることがわかる.の値がゼロに近いとき
は
が大きいほど小さいから,
上の式は
がゼロに近づくとき
は
よりもずっと速くゼロに近づくことを意味している.
指数関数を例に説明したが,一般のの場合,
の近くに限らず一般に
の近くの場合
(テイラーの定理),
(剰余項)の表示式(ラグランジュの剰余項)とその大きさの評価,などメインの話は教科書
(松木敏彦『理工系
微分積分』学術図書出版)に沿って授業で説明する.
(2009年5月2日作成)