阪上 研究室
研究案内
私の主たる興味は、人工的な構造を持つ物質の示す物性および、その物性と構造についての関係から基礎的な物性についての知見を得ることです。また、この人工的な構造は、応用の面から見ても非常に重要です。たとえば、現在使用されているパソコンの中に入っている記憶装置(ハードディスク)の記憶の読み取りに使われるセンサー部分は、十オングストローム前後の大変薄い金属薄膜の積層構造が使われています。これは、従来の単一の構造からなるセンサーでは、高い密度の弱い信号を検知できないからです。また、全く別の用途として、軟X線領域の反射鏡として使用されます。波長が100Å前後の軟X線には、屈折を利用した像を結ばせるためのレンズ等(光学素子)がありません。これも、人工的な構造を利用することで解決することができます。
また、これらの人工格子を作製するためには、人工格子を力学的に支持する基板の表面や、各薄膜の成長のメカニズムを明らかにしておく必要があります。そのために、高速電子線回折(RHEED)や、X線回折を使用して構造を調べています。
当研究室では、金属や誘電体を中心として人工的な積層構造をもつエピタキシャル薄膜を作製し、その物性を測定しています。現在、クロムやチタンの薄膜の成長初期過程を調べながら、良質のエピタキシャル薄膜の作製条件を検討しています。詳細は、発表できる段階になれば、ここに掲載する予定です。
現有の研究設備
現在は、真空蒸着装置を使用して成長条件を調べていますが、この装置は本学科寺内研究室の所有となっています。この装置には、電子線を利用して蒸着物質を加熱できる蒸発源を1基、クヌードセンセルを2基、装備しています。また、試料作製中の表面状態観察用として、高速電子線回折(RHEED)を1基装備しています。
また、薄膜の平均構造評価を目的として、回転対陰極型18kWのX線発生装置と、4軸型X線回折装置を使用しています。これも寺内研究室の装置です。