ミツバチは社会性昆虫であり,集団で異方的な構造をした巣を作ることが知られている. 本研究では,その異方性発生に関する数理モデルとして異方的要素を取り入れない数理モデルを提案する. その等方的モデルにおいて異方的な空間パターンが発生するかを確認した結果を紹介する.
データの利活用のためには構造化されたデータベースが必要ですが、医療分野に おいて実データは構造化されておらず整備する必要があります。データベース整 備にかける負担や、複数病院間でのデータ利用が困難であるなど課題が多いで す。今回、手術データベースの構築事例について紹介させてもらいます。
ARIMA (Autoregressive Integrated Moving Average) モデルは線形モデルの時系列予測にて幅広く使用されている. しかし, ARIMA モデルは時系列の非線形部分を予測することが困難である一方, SVM (Support Vector Machine) モデルの SVR (Support Vector Regression) は非線形回帰問題に対し, 有効であることが示されている. これにより, 株価予測問題において, 株価を線形部分と非線形部分に分け, それぞれを予測し, 予測誤差を小さくさせることが可能となった. しかし, ARIMA-SVR モデルは意思決定者によりパラメーターを決定する時, 最適なパラメーターではない可能性がある. そのため, 本研究では, ARIMA-SVR モデルのパラメーターを最適させ, モデルの予測パフォーマンスを向上させるため, 遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithms) で SVR モデルのパラメーターを最適化する ARIMA-GA-SVR モデルを提案する.
金融資産共分散行列の推定や予測は資産配分やリスク管理において重要な役割を果たす. 近年では高頻度データを用いた分析や巨大な資産ポートフォリオ (高次元共分散行列) での資産配分やリスク管理に注目が集まっている. 特に高次元設定では, ファクター構造を取り入れることでパラメータの次元を削減してモデル化することが可能となる. 日内収益率の観測数が $M \to \infty$ の時, 実現共分散行列は累積共分散行列の一致推定量となることが知られている. しかし, 実際の推定では市場のマイクロストラクチャノイズの点から 5 分間隔や 10 分間隔の収益率を使用することが多い. この場合, 1 日内のサンプルサイズはそれぞれ 60 と 30 となる. 従って, 高次元共分散行列を考えるときには行列の次元 $d$ が日内サンプルサイズ $M$ より大きくなる $d >> M$ の状況が発生するため, 推定された共分散行列の固有値はバイアスを持つことが知られている (Wang and Fan, 2017). そこで本研究では, 資産価格に対してファクター構造を仮定し, $d >> M$ の状況でも推定精度が安定する高次元主成分分析を用いて高次元共分散行列の推定を行う.
優れた構造物をコンピュータで導出する方法として構造最適化があり,その中でもトポロジー最適化は最も設計自由度が高いという特徴をもつ.トポロジー最適化では設計問題を,偏微分方程式で表される支配方程式を制約にもつ変分問題として定式化する.この変分問題を解く際の構造表現方法やアルゴリズムなど,トポロジー最適化特有の要点や注意点を,最近の研究事例を交えて紹介する.
本発表では,拡散ロジスティック方程式の定常問題に着目し,「限られたエサをどのように配分すれば,多くの個体が生き残るのか」という生物学における問いに,微分方程式の立場から答えることを目標とする.数学的には,Ni によって提起された「定常解の L^1 ノルムとエサ函数の L^1ノルムの比の上限を求めよ」という問いに対応する.この問題に対して,1次元区間においては上限が 3 であるというNi による予想があり, Bai,He と Liによって肯定的に解決された.本発表では,2次元以上の球領域においてこの比の上限が無限大となることを紹介する. 本研究は早稲田大学の久藤衡介先生との共同研究である.
1970年代,Lovelockは地球がそこに棲む生物が自らにとって快適であるように環境を自律的に調節しているひとつのシステム(恒常性自己調節システム)?であると考えた.この仮説の正当性を検証するために導入された数理モデルが,WatsonとLovelockのデイジーワールドモデルである.これは惑星上に生息する生物を2種類のデイジーの花のみに,環境を温度のみに単純化した地球システムモデルである.本発表では,2次元長方形領域上のデイジーワールドモデルに対する定数定常解の安定性条件と数値シミュレーション結果を紹介する.さらに,数値シミュレーションによって得られたデイジーの空間分布パターンと惑星の温度恒常性との関係について述べる.
本講演では、反応項がロジスティック型の反応拡散方程式の定常状態に注目し、特に、環境収容量が空間に対して非一様なものを扱う。この方程式に対して、拡散係数と環境収容量を様々に変化させ、できるだけ多くの生物個体を生存させるという最適化問題がNiにより提唱された。空間1次元においてはBai-He-Liらによって最適値が"3"であること、すなわち、最適である時は総資源1に対して総個体数3の状態となっていることが証明された。しかしながら、最適に近いときの解の形状はほとんど解明されていなかった。そこで本講演では、最適値"3"を達成するときの解形状について新たに得られた結果を紹介したい。また、空間の次元が2以上の場合においてこの最適値がどうなるかを議論したい。
指数関数の変数に冪がかかった拡張型指数関数は、緩和過程を記述する上で経験的に発見され、次第に幅広い緩和を記述する有力な関数として注目されてきた。しかし、その関数の物理的解釈においては未だ議論になっており、単なる経験的なフィッティングツールとしてしか見ない向きもある。本研究では先行研究より拡張型指数関数の冪数が緩和過程の空間的・時間的な不均一性に基づいていることが示唆されていることから、この不均一性を定量する手法として、情報工学において統計的不均一性の一つの指標となっているShannon entropyを用いた解析を行った。主要な結果として、平均緩和時間が保存されている条件では、拡張型指数関数は単一指数関数の条件がもっともShannon entropy的には安定であることが示された。この結果は他のモデルにおけるエルゴード性、拡散場の不均一性などの有無と一致しており、物理的な関連が示唆される。この内容を基にShannon entropyを用いた解析の可能性に関して議論したい。
第13回数理・データ科学教育研究センター談話会 (今回は,理工学部講演会との共催です.)
Lovelockは地球が気候や化学物質を自己調節する巨大なシステムを持つという仮説を立てた.それを単純化して作ったモデルがデイジーワールドである.これは明度の異なる2種類のデイジーが次第に太陽光が強まる惑星で成長を競い合い,それによって大域的な気温をデイジーの成長に最適な値へと自律的に調節する仮想モデルである.WatsonとLovelockはこれらを単純な方程式に定式化したデイジーワールドモデルを導入し,惑星が温度を自己調節することが可能であることを示唆する結果を示した.本講演では,既存のデイジーワールドモデルの改良を目的としデイジーの拡散効果を加えた2次元植生・気候フィードバック拡散モデルについて説明し,そのパターンについて発表する.
「社会性昆虫」のアリは,周囲の状況に依存して様々なタスクを柔軟にふりわけ,コロニーが必要とするタスクをこなしている.タスクには,卵や幼虫の世話,巣の管理,採餌などがあげられ,個体ごとの役割はリーダー無しで発現される.この複雑なタスク分割の仕組みについての定量的な検証は,アリの個体識別を長期間続けることが困難なことから十分行われていない.そこで本研究では,極小RFIDチップを個々のアリに取り付け,PCにデータを転送し個体識別を行い,採餌回数の自動計測,解析を行った.
セルオートマトン(CA)とは,全変数が離散的であり,状態変数の値域が有限集合となっている時間発展系である.CAは元々決定論的な挙動を表現する系だが,確率変数を導入することによってランダムな挙動を見せる系(確率CA)を生み出すこともできる.本講演では,保存則を持つCAや確率CAについて,保存則によって保たれる局所的な状態のパターンが空間を移流する様子(流束)と,状態の密度との関係を解析するための手法である基本図を導出することを主な目的とし,発表を行う.
Hildebrand, Ipsen, Mikhailov and Ertl (New J. Phys. 5 (2003)) proposed an adsorbate-induced phase transition model. Takei and Yagi (Sci. Math. Jpn. 61 (2005)) showed numerically that various spatio-temporal patterns emerged in the model. Kuto and Tsujikawa (RIMS Kokyuroku Bessatsu B3 (2007)) also proved the existence of nontrivial solutions to the model, which bifurcated from a unique uniform state by using the local bifurcation theory. In this study, we find stationary patterns numerically corresponding to the bifurcated nontrivial solutions and show the stability of the evoluting solutions.
In this study we consider the initial boundary value problem for a nonlinear parabolic equation of forth order in a two?dimensional bounded domain. The equation was presented by Johnson, Orme, Hunt, Graff, Sudijono, Sauder and Orr (Phys. Rev. Lett. 72(1994)), in order to describe the process growing of crystal surface by mathematical model under Dirichlet boundary condition. In this talk, we will present numerical simulation results in an interval and rectangular domains. This shows that: with the time increases a numerical solution converges to a stationary solution. When the surface roughening coefficient \mu is sufficiently small, a unique homogeneous stationary solution u=0 is stable because surface diffusion is stronger than roughening. When \mu is sufficiently large, u=0 is unstable because roughening is stronger than surface diffusion, and the structure of solution changes to a hills pattern. With increasing \mu the number of hills increases.
ミツバチは造巣を行う際,蜂球と呼ばれる自己集合を形成する.さらに,それをきっかけとして,その内部で一定の間隔で平行に巣板が複数枚形成される.発表者自らが行った実験結果から,造巣の初期段階において熱が主要因となりうることが分かってきた.本発表では,そう考えるに至った実験結果を紹介し,また,ミツバチの走熱性を課した数理モデルを提案する.
統計物理における射影演算子法は,着目する巨視的物理量の時間発展方程式を導出する数学的手法の1つである,これまでに数々の現象に適用されてきたが,その中から我々が関わってきた現象として2つのトピックの概要を述べる.1つは過冷却液体状態のダイナミクスへの適用であり,従来の理論との比較や今なお残る問題点を整理することで過冷却液体状態の本質に迫る試みを紹介する.もう1つは時空カオスと呼ばれる時間空間的に乱れたパターンへの適用で,液晶電気対流系における実験結果とあわせて紹介する.
株価収益率のボラティリティの変動特性の1つとして、ボラティリティの非対称性がある。経験的に株価収益率のボラティリティは、株価の上がった翌日よりも株価の下がった翌日の方が大きくなることが知られており、これはボラティリティの変動に非対称性があることを意味する。本研究では、分数関数プロセスによってボラティリティの非対称性を取り入れたGARCHモデルを提案し、EGARCH,GJRGARCHなど他の非対称GARCHモデルと実証的に比較した結果を紹介する。
We compare the performance of two Markov Chain Monte Carlo (MCMC) samplers, Griddy Gibbs (GG) and Metropolis-Hastings (MH), to estimate parameters and latent variables in four log-normal stochastic volatility (LNSV) models. The daily stock indices we use are TOPIX and three stocks of the TOPIX Core 30: Hitachi Ltd., Nissan Motor Co. Ltd. and Panasonic Corp. , from January 2004 to December 2011. It is shown that the volatility by MH sampler is more persistent and less variable than those by GG sampler. Using the daily Realized Volatility as true volatility, it was found that the GG sampler is superior according to all six loss functions for TOPIX in the LNSV model with fat-tails and leverage effect, while the MH sampler is superior according to five loss functions for Hitachi in the SV model with leverage effect and for Nissan in the SV model with fat-tails and leverage effect and three loss functions for Panasonic in the SV model with fat-tails. Furthermore, GMLE (Gaussian quasi-maximum likelihood function) loss function is only minimized on all stocks in the same model and sampler: LNSV model with fat-tails and leverage effect by GG sampler.
Keywords: Log-normal stochastic volatility, Markov Chain Monte Carlo, Griddy Gibbs sampler, Metropolis-Hastings algorithm, TOPIX
複素平面内の単位円板上で、調和で1対1かつ向きを保つ関数全体をS_Hとする。S_Hの元で像が近接凸領域となるものをC_Hとし、像が星型領域になるものをS_H^*とする。本講演でS_H 、C_H 、S_H^*に属する関数の性質を紹介し、関数がこれらの関数族に属する条件について得られた結果を具体的な例を交えて説明する。
アブストラクト http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/mathc/achievement/mathc_2012_02_23.pdf
A hybrid MCDM model combined with DEMATEL and ANP for evaluating and improving problems is more suitable in the real world than the previously available methods. This research used the DEMATEL technique to acquire the structure of the MCDM problems. In the past few years, DEMATEL is very popular in Taiwan and Japan because this method can effectively understand a complex structure, and by checking the effects on each elements and using matrix and related math theories to calculate the cause and effect on each element and the degree. Tzeng et al. (2007) indicates that DEMATEL can enhance the understanding on special problems, collaborate with the problem groups, and provide feasible idea by level structure. The ANP is the general form of the Analytic Hierarchy Process (AHP) (Saaty, 1980) which has been used in multicriteria decision making (MCDM) to release the restriction of hierarchical structure. The purpose is to solve the relaying and feedback problems of criteria. ANP loses the limited from AHP, in other words, ANP generalize AHP. The biggest difference between the two methods is that ANP has decision problem when applies to cases and criteria; however, AHP neglects the problem and presume its independent relationship, so when feedback occur to exclude the cases and criteria, which might lead to affect decision making, ANP will yield a more practical result. This paper’s case study is about the project management office that is responsible for the oversight of all projects. Therefore, the purpose of this paper is to establish an evaluation model of PMO implementation and prove how to use qualitative and quantitative measurements of PMO to create indexes and criteria, as well as how to help program manager use these indexes to decide building elements priorities of the PMO. To establish the evaluation model, this research proposes a novel MCDM model, combined DEMATEL technique with ANP for Exploring the PMO. We probe into the influential criteria and relative weights of essential criteria of a PMO.
Keywords: MCDM (multiple criteria decision making), DEMATEL (decision making trial and evaluation laboratory), ANP (analytical network processes), PMO (project management office)
多項式補間の観点から関数のテイラー展開を見直し,関数の2 点テイラー展開を定義する.a を正の数としたとき,区間 [-a, 0],[0, a] において多項式で表される連続関数が 2 点テイラー展開可能であることを紹介する.詳しくは以下のファイルを参照のこと.
配布資料 http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/mathc/achievement/mathc_2011_11_09.pdf
講演の概要は 雑誌「数学」の論説用原稿 にあります。そこでは、アルゴリズムとゲームを並行して論じているのですが、談話会ではゲームに焦点をしぼります。 微分方程式と同様、ゲームでも可解なクラスとカオス的なクラスの両極端が興味の中心です。今回の講演では「佐藤のゲーム」に代表される完全可解ゲームについての最近の研究について(もちろん、予備知識を仮定しないで)話します。
プレゼン資料 http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/mathc/achievement/mathc_2011_06_29.ppt