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近年の情報デバイスの進化に相まって,いわゆるビックデータを容易に取得できるようになり,その解析手法に対する研究への期待がますます高まっている.ビックデータは,解析を行う切り口をうまく見つけなければ,そこから有益な情報を得ることはできない.そのため,数理を用いたデータに対する切り口の発見と,解析を行うことが肝要である.本センターでは,生物運動に関する時空間データや感染症患者数などの医療データ,そして株価変動などの金融データ等を研究素材として,自然・生命・社会現象に対する数学理論(数理)とデータ科学に関する研究を行う.具体的には,各種データに切り込むための数理モデリングとその解析,そして解析結果から得られる現象の本質理解と解析手法自体へのフィードバックといった一連の流れを体系化することを目指す.また,得られた知識を本学学生ならびに社会に対して,できるだけ洗練された形で還元することも目標とする.

お知らせ

第18回数理・データ科学教育研究センター談話会

講演題目 拡散ロジスティック方程式における最適定常分布についての研究紹介
講演者 井上 順平(電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻M2)
日時 2020年02月12日(水)15:30-16:30
場所 5号館2階数理研究室11(神戸三田キャンパス理工学部5号館2階)
講演内容

本発表では,拡散ロジスティック方程式の定常問題に着目し,「限られたエサをどのように配分すれば,多くの個体が生き残るのか」という生物学における問いに,微分方程式の立場から答えることを目標とする.数学的には,Ni によって提起された「定常解の L^1 ノルムとエサ函数の L^1ノルムの比の上限を求めよ」という問いに対応する.この問題に対して,1次元区間においては上限が 3 であるというNi による予想があり, Bai,He と Liによって肯定的に解決された.本発表では,2次元以上の球領域においてこの比の上限が無限大となることを紹介する. 本研究は早稲田大学の久藤衡介先生との共同研究である.

 

センターの研究概要

(a) 研究内容

以下の3つの研究プロジェクトを掲げる.全てのプロジェクトには,数理科学専攻の大学院生や博士研究員なども参画し,その一部は修士・博士課程大学院生の研究課題にもなる予定である.

(i) 【自然現象に対する数理モデリングと解析】

大腸菌や納豆菌などの微生物ならびに,ミツバチやアリなどの社会性昆虫の行動に対する数理モデリングとその解析に関して,特に生物の走化性ならびに社会性という概念に焦点を当て,その作用を含む数理モデリングと解析を進める.また,ミツバチの造巣や採餌行動に関するデータ取得についても押し進め,自然現象に対する数理モデリングとその解析に関する基盤を形成する.

(ii) 【生命現象に対する数理モデリングと解析】

医療機関から提供していただいたデータをもとに,疾患発症機構を数理的に解析する.具体的には,定点観測による感染症患者数の推移に対する数理解析,ならびに肝疾患患者の血液データをもとに,肝臓ミクロ構造の形態変異と発症機構の関係性に対する解析を行う.

(iii) 【社会現象に対する数理モデリングと解析】

金融データの解析を通じて数理モデルの開発およびその理論分析を押し進める.この分野では,これまで確率論や統計学等を理論的裏づけとしてリスク管理の手法が開発されてきたが,本プロジェクトにおいては,さらに機械学習およびデータマイニングといった近年急速に発展した技法を積極的に取り入れ,新奇に研究を進める.

(b) 研究成果公開計画(論文、執筆、学会発表、その他出版等)

各研究においては,査読付き学術論文ならびに研究集会・学会等での公表を基本とする.また,研究期間内に仕上げることを義務とはしないが,まとまった成果を将来的に本学出版会等から書籍出版することを念頭に入れ,研究を進める.

(c) 社会貢献活動実施計画(公開研究会、講演会、シンポジウムの開催等)

半期2件程度の頻度で公開の談話会を開催する.また本学高等部や他の高校への出前授業ならびに,夢ナビライブ等,高校生に対する研究成果啓発イベントにおける講演を積極的に引き受け,研究成果の普及と啓発に努める.またひらめき☆ときめきサイエンスなどの科研費研究成果社会還元・普及事業などにも申請する.

(d) 特許出願・発明届出計画

なし

(e) 研究者養成計画

2018年度は,研究代表者の研究室にて学院採用博士研究員1名を迎える予定であり,自然現象の数理解析に関する共同研究の中で,若手研究者育成を図る.また,数理科学科所属の理工学部契約助手ならびに助教とも共同研究の可能性を探る.本センター主催の談話会においては,若手研究者も積極的に招き,本センターから有益な情報提供をするなどしつつ,共同研究の可能性も探っていく.