作製中ですので、未完成です。
|
栗田 厚
|
略歴
1956年9月 | 愛知県刈谷市に生まれる |
1979年3月 | 東京大学 工学部 物理工学科 卒業 |
1984年3月 | 東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 博士課程 単位取得退学 |
1984年4月 | 大阪大学 理学部 物理学科 助手 |
1985年3月 | 工学博士 (東京大学) |
2003年4月 | 関西学院大学 理工学部 物理学科 |
研究内容
研究テーマは広い意味の光物性物理で、主にレーザー分光の手法を用いて、光と物質との相互作用によって起きるさまざまな現象を研究します。特に、私はここ数年、ランダムな光学媒質中での光の特質や新しい光学現象・光機能の解明を研究の中心としてきました。
ランダムな光学媒質とは、散乱体(微粒子など)が空間的に不規則に分散している媒質で、白く見えるものはどれもランダムな光学媒質といえます。このようなものに光をあてても、内部で何度も散乱されて不規則に四方八方に散らばるだけで、何もおもしろいことはないだろうと考えるかもしれませんが、最近、このような系に特有のさまざまな現象が存在することがわかってきました。たとえば、散乱が非常に強くなると、光が散らばるのでなく、逆に媒質中に捕らえられて動けなくなる「光の局在」現象
が起こります。これは、乱れた系での波の干渉によるもので、光(電磁波)に限らず、波動において一般的に生じる現象です。量子力学では波として扱われる電子では、これに対応するものが「アンダーソン局在」として知られています。
このようなランダムな媒質に、光を増幅する媒質を混ぜ込むと、さらにおもしろい現象が起きます。光の増幅媒質とは、それに光や電気的な方法によってエネルギーを与えると、入射した光をより強い光として通過させる物質です。これを平行な2枚の合わせ鏡でできた共振器の中に置くと、光が往復する間にどんどん強くなり、その一部を取り出したのがレーザー光です。ところが、増幅媒質をランダム媒質に混ぜてやると、共振器が無いのにレーザー作用が起きるという、たいへん不思議な現象が最近発見されました。「ランダムレーザー」
と名づけられたこの現象の詳細は、まだわかっていません。一方、ランダム媒質と光反応材料を組み合わせると、入射した単色光の、周波数・波面の形・偏光の状態がすべて記録されるという、一種のメモリー効果が起きます。ランダムレーザーも、光メモリー効果も、サイエンスとしておもしろいだけでなく、今までにない光機能の実現という、実用面での可能性もあります。また、上の話は、「光」と「物質」のうち、光の性質の方が中心ですが、物質の方に重点を置いた、光を手段とする物性研究 ―対象物質としては、ガラス、高分子、蛋白質などの非晶質系を主に取り上げる― の方も進める予定です。
主な解説記事と論文
論文はすべて PDFファイルなので、見るためには、Acrobat Reader が必要です。
「あるセレンディピティーについて」, 大阪大学低温センターだより, No.110 (2000) 3-11. (図面はファイルの最後にまとめてあります)
「強散乱体と光反応材料の組み合わせによる光記録効果」,
光学,
30 (2001) 117-122.
「Sm添加ZnSナノ結晶中の光の多重散乱によるホールバーニング効果」 (光物性研究会1998 予稿)
「多重散乱光の干渉による光記録効果におけるホールの深さについて」 (光物性研究会1999 予稿)
「多重散乱光の干渉による光記録効果のホール幅と散乱強度の関係について」 (光物性研究会2000 予稿)
"Wavelength- and angle-selective optical memory effect by interference of multiple-scattered light" ,
Phys. Rev. Lett.
83 (1999) 1582-5.
"Wavelength- and angle-selective properties of optical memory effect by interference of multiple-scattered light in Sm-doped ZnS nanocrystals", J. Lumin.
87-89 (2000) 986-8.
"Optical memory effect by interference of multiple-scattered light in a fluorescent fulgide derivative", Mol. Cryst. Liq. Cryst.
344 (2000) 205-210.
"Observation of optical memory effect due to interference of multiply-scattered light by using a focused beam", J. Lumin.
98 (2002) 325-330.
"Room-temperature persistent spectral hole burning in Sm
2+-doped fluoride glasses", Opt. Lett.,
19 (1994) 314-316.
"Two-level systems in myoglobin probed by non-Lorentzian hole broadening in a temperature-cycling experiment", Phys. Rev. Lett.,
74 (1995) 4349-4352.
他に、丸善の「実験物理学講座8 分光測定」の、変調分光の部分を書いています。
最近受けた研究助成
1989年 4月 | 文部省科学研究費 一般研究(C) (代表) |
1993年 3月 | 倉田奨励金 (代表) |
1994年 8月 | 分子科学奨励森野基金 (代表) |
1998年 4月 | 文部省科学研究費 基盤研究(C)(2) (代表) |
1999年 4月 | 文部省科学研究費 基盤研究(B)(1) (分担) |
1999年 7月 | 村田科学技術振興財団 研究助成金 (代表) |
2000年 1月 | ホソカワ粉体工学振興財団 研究助成金 (代表) |
2000年 4月 | 文部省科学研究費 基盤研究(B)(2) (代表) |
2000年 4月 | 文部省科学研究費 萌芽的研究 (代表) |
2001年12月 | 光科学技術研究振興財団 研究助成金 (代表) |
2003年 9月 | 山田科学振興財団 研究助成金 (代表) |
2004年 4月 | 文科省科学研究費 基盤研究(C)(2) (代表) |
2004年 4月 | 文科省科学研究費 特定領域研究 (代表) |
特許出願
材料識別方法及び材料識別システムならびに材料識別装置 | 特開2003-329588 |
光記録媒体とその製造方法、及び光記録・再生装置 | 特開2000-099989 |
遷移元素ドープ微粒子を用いた非線形光学材料および非線形光学素子 | 特開平11-231363 |
ホールバーニング・メモリ | 特開平05-100355 |
担当授業
サブゼミ | 1年春学期 | |
デモンストレーション物理学II | 2年春学期 | 講義ノート (学内限定) |
物理学実験法 | 1年春学期(集中講義) | |
スピン・光物性 | 4年秋学期 |