関西学院大学・理工学部・物理学科

タンパク質折りたたみ機構の研究

瀬川研究室
 生命とはDNAの自己複製機能と自然淘汰が創りだした分子レベルの秩序構造です。ゲノムのDNA情報をタンパク質という機能素子に読み出して、認識する、応答する、記憶するなどの生物機能を実行します。タンパク質のアミノ酸配列が生物機能という個性を獲得する過程を物理科学の問題として研究することが面白いと思っています。それがタンパク質の折りたたみ問題です。折りたたみ反応の最終過程は、NMR分光器などの観測手段によってかなり明瞭に分かるようになってきました。我々の現在の研究テーマは折りたたみ反応初期に形成されるポリペプチド鎖上の部分構造を原子レベルの分解能で解明することです。

上の図はリゾチーム変異体に対して、27℃で10nsのあいだ分子動力学計算した結果を解析したものです。分子内の各原子は複雑な運動をしますが、分子全体として構造の揺らぎが最も大きな第一主成分という運動モードを表示しています。揺らぎの大きさは実際のスケールを50倍に拡大しています。赤いαへリックスの部分に比べ青いβシートの部分の揺らぎが大きくなっています。赤と青の領域が接触する分子の中心部の動きが小さいことにも注目してください。これらの計算結果はNMRによる観測結果とよい相関を示しています。