図3. pRBの制御を外れたE2Fによって活性化されるがん抑制遺伝子ARFは、増殖刺激で誘導された生理的なE2Fによっては活性化されない
このようにE2Fは、細胞環境に応じて細胞増殖と細胞死という相反する細胞運命を仕分けています。しかし、その仕分け機構の詳細は明らかにされていません。私達は、増殖刺激で誘導された生理的なE2Fは、がん抑制遺伝子ARFを活性化しないことを見出しました
(EMBO J, 2005)(図3)。ARF遺伝子は、pRBの強制的な不活性化やE2Fの過剰発現などによって誘導された、pRBの制御を外れたE2Fによって特異的に活性化されます。すなわち、増殖刺激によって誘導された生理的なE2Fは増殖関連遺伝子のみを活性化するのに対し、pRBの制御を外れたE2Fは増殖関連遺伝子だけでなく、がん抑制遺伝子ARFを活性化し、p53を活性化することによりがん化を抑制します。
図4. 細胞のがん化には、pRBに加えてp53の機能が障害されることが必要である
pRBの機能不全が生じると、E2Fはp53を活性化することによりがん化を抑制します。そのため細胞ががん化するには、pRBの機能不全に加えて、p53の機能も障害されて、がん化抑制機構が働かなくなることが必要です(図4)。その結果E2Fによる増殖促進効果が前面に出ると、がん化に貢献すると考えられます。事実、ほぼ全てのがんにおいてpRBとp53の機能を障害する何らかの変異が同定されています。