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研究内容

HTLV-Iの受容体は、普遍的に存在するグルコーストランスポーターGLUT1であると報告されています。また、試験管内で感染させると、HTLV-Iは種々の細胞種に感染することができます。しかし、生体内ではT細胞の白血病を引き起こし、他のがんは引き起こしません。HTLV-I感染によるこの細胞種特異的ながん化の原因は明らかにされていません。私達は、TaxはT細胞においては細胞周期制御遺伝子を活性化し、細胞周期進行を促進できるけれども、線維芽細胞においては細胞周期制御遺伝子を活性化できず、細胞周期進行を促進できないことを見出しています。従って、Taxによる細胞周期進行の促進能の細胞種特異性が、HTLV-I感染によるT細胞特異的ながん化に重要である可能性が考えられます。また、Taxによる細胞周期制御遺伝子の活性化は、転写因子NF-kBを介することを見出しています。したがって、HTLV-I感染によるT細胞特異的ながん化に、TaxによるNF-kBを介した細胞周期制御遺伝子の活性化が重要である可能性が示唆されます(図9)

図9.TaxによるNF-kBを介した細胞周期制御遺伝子の活性化がT細胞特異的ながん化に重要
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