Research
多重項計算のための新規ソフトウェア開発
配位子場の科学においては、遷移金属イオンや希土類イオンの多重項状態が重要な役割を果たします。多重項状態の解析は、一般的に結晶場理論や配位子場理論に基づいて行われていますが、これらはパラメーターの値を実験結果に基づいて決定する半経験的手法であるため、未知の物質や仮想的な物質の解析には適用できません。本研究室ではパラメーターを用いずに多重項状態の計算を行う第一原理電子状態計算ソフトウェア(Discrete-Variational Multi-Electron;DVMEプログラム)を独自に開発しました。これにより、未知の物質や仮想的な物質の電子構造やスペクトルの予測・解析が可能になりました。
第一原理計算に基づく配位子場科学
通常の結晶場理論や配位子場理論では、実験結果に基づいてパラメーターの値を決定しますが、スペクトルを結合距離や結合角などの具体的な局所構造に対応付けることはできません。一方、DVMEを用いた第一原理計算では具体的な局所構造を表すクラスターモデルを用いて計算を行うため、局所構造とスペクトルの対応を明確にすることができます。また、通常の解析では、共有性、イオン性、結晶場等の様々な効果がパラメーターに吸収され分離不可能になりますが、第一原理計算ではこれらの効果を分離して定量的に評価できるため、より詳細な解析が可能になります。
蛍光体/固体レーザーの電子構造解析
遷移金属イオンや希土類イオンは蛍光体や固体レーザー材料における発光イオンとして利用されています。近年、白色LEDが次世代の照明として注目されているため、白色LED用の蛍光体の重要性が高まっています。DVMEを用いた第一原理計算により遷移金属イオンや希土類イオンの多重項状態を詳細に解析することで、より高性能な発光材料の設計指針を探索しています。
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