解析学(Spring 2008)
講義内容.
ルベーグによる測度論および積分論を講義する.測度とは
長さや面積などの概念の自然な拡張で、それらがもつ加法性よりも強い加算加法性
と呼ばれる性質をみたすものである.「可測関数の測度による積分」
という概念のおかげで、
- さまざまな空間上での積分を見通し良く定式化できる
- 積分する事と極限操作の順序交換が実行可能であるための十分条件が、
応用上便利な形で与えられる.
といった利点が得られる.その結果微分方程式論や
確率論といった現代の解析学においてルベーグ測度論・積分論が本質的な役割を
果たしている.
この講義の最終目標はユークリッド空間上の
ルベーグ測度による積分を定義し、その性質を学ぶことであり、考える
対象は極めて具体的なものである.しかし、長さや面積がみたす性質を
抽象化したものが測度なので、抽象的な
レベルで進む議論が多い.初学者は、これについていけないことが
多く、また抽象的なレベルの議論と具体的なモデルについての考察とを
区別できずに、全体のストーリーを見失ってしまうことが多い.
そのようなことを避けるためには、まず1,2年次までに学ぶ、微積分学、
集合・位相、についてその内容をよく理解しておく必要がある.
この講義では、
最小限の復習をした後、積分論に入る.まず,ルベーグ積分論の果実である
「収束定理」の応用例を相当数提示する.これらの例を自分で計算して
、積分論の意味をつかんでほしい.
話の流れ
- 復習1.実数の連続性、数列の収束発散、Cauchyの条件
- 復習2.リーマン積分
- 復習3.関数列、関数項級数の収束発散、各点収束と一様収束
- 復習4.ユークリッド空間の位相
- 測度空間、ルベーグ測度とルベーグスティルチェス測度
- 可測関数
- ルベーグ積分の定義
- 収束定理1.
- 収束定理2.
- フビニの定理
文献
志賀徳造 ルベーグ積分から確率論共立出版
成績のつけ方
定期試験による.ただし10回の小テストによって最高20点まで配点する.