▼科学技術振興機構「先導的物質変換領域」
▼日本化学会新領域研究グループ 「有機合成化学を起点とするものづくり戦略」
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研究概要

機能性有機化合物、生理活性天然有機化合物の合成を念頭に、新しい合成反応や合成論理の開拓を目指しています。中でも、有機電導体や有機磁性体に代表されるπ共役系有機化合物の汎用的かつ実用性の高い合成法の開発に重点を置き、研究を行っています。π共役系有機分子は材料科学・生命科学における重要な物質群ですが、実はこうした分子を構成する芳香環・複素環化合物の合成には、未だ制限があり、これまで新しい物質を創製する機会が大きく阻まれてきました。これは、望みのもの(原子・分子)を望みの場所に、望みのタイミングで導入(結合)させる合成手法の欠如と、合成化学によって精密に構築できる空間が、まだまだ小さいことに由来しています。このため、新しい物性や機能の宝庫であるπ共役系分子をナノ領域のレベルまで精密に、しかも自在に合成できる新しい合成方法論の開拓が望まれています。このような背景の下、私達は以下の二つのテーマを柱として研究を遂行しています。

1) 各種有用物質を合成するためのコア分子として、“潜在的に高い反応性を持つ分子”を取り上げ、その化学的性質について詳しく調べています。ここで言う、“高反応性分子”とは、幾何学的にひずんだ形を持つ小員環化合物のようにエネルギー状態の高い分子を指します。そのため、これらの分子はその取り扱いによっては、自発的に反応してしまったり、壊れたりしますが、その性質をうまく引き出すことができれば、これらの独特の個性が発揮され、これまでにない革新的な合成手法の開発が可能になるものと期待できます。

2) 高反応性分子の自発的な反応性を駆使し、多様なナノ構造体の自在合成、ひいてはそれらの分子群の織りなす三次元空間を精密に制御する方法論の開発を目指しています。具体的なナノ構造体の合成とその機能評価を行い、新しい機能性分子の創製に向けた指導原理の確立を図ります。