数理科学科の学生へ

1. はじめに
本研究室では、金融工学を勉強します。金融工学と一口に言っても非常に幅広い学問を包摂していますので、卒研ゼミでは金融工学の基本的枠組みを学習することから始めます。必要な知識としては、数理科学全般、経済、金融などですが、特に「確率・統計」の基礎的な知識は必須ですので、確実に身に付けておいてください。できれば、最近の経済、金融ニュースなどになるべく多く触れ、基礎体力を鍛えておくよう心掛けてください。また本ゼミでは、金融データを分析することを目標にしていますので、Maple、Matlab、R等のプログラミング言語を利用する必要があります。これらの言語に関しては、ゼミにおいて必要に応じて適宜解説しますので、特に前提知識として必要はありません。ちなみに、下図はBlack-Scholes式で計算した満期T、行使価格K、コール・オプション価格Cとの関係をプロットしたものです。
Black-Scholes Call Price (TOPIX [0113])

2. ゼミの進め方
参考に2009年度のゼミ内容を紹介します。春学期の教科書としては「小暮厚之、照井伸彦『計量ファイナンス分析の基礎(ファイナンス・ライブラリー)』(朝倉書店、2001)」を用い、学期中にこの教科書のほぼすべてのトピックを網羅的に輪読しました。また、コンピュータ演習ではプログラミング学習の一環として、数式処理システムMaple、及び統計処理ソフトウェアRを用い、カイ二乗検定、分散分析、また回帰分析といった統計手法により実際のデータ解析を行いました。秋学期は春学期に学んだ金融工学の知識を発展させるべく、数値解析ソフトウェアMATLABを用い本格的な金融データ解析を行っています。データには、東京証券取引所上場の日経225採用銘柄、株価指数としてTOPIXと日経株価指数の日次収益率を用いています。現段階では、シングルファクター・モデルのパラメータを回帰分析により推定していますが、今後、GARCHモデル等の時系列モデルの推定、及び予測も行う予定です。そして、これらの結果を4人の卒研生全員が協力して一つの卒業研究に纏め論文の形で印刷する予定です。ちなみに下図は多変量GARCHモデルの共分散とノイズの関係をプロットしたものです。
News Impact Surface for BEKK (Normal)

3. 最後に
上述のように、金融工学を学習するためには、非常に幅広い知識とその理解が必要です。そのため、卒業研究の一年間だけでそれなりの結果を出すのは、なかなか難しいというのが実際だと思います。つまり、もし貴方が金融・保険業界へ即戦力としての就職を考えているならば、最低でも修士課程に進まなければ、プロが納得するような技術を習得することはできません。ですから、ある程度の結果を出すためには、基本的に大学院へ進学することを前提に、本ゼミに参加されることをお勧めします。最後に、本ゼミに参加された学生の皆様が、広大無辺なる金融工学という学問の一片に触れ、その経験を生かし、社会に出て活躍されることを期待しています。

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