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理工学部で学ぶ新入生諸君のために

あせらず、しかしたゆまず

理工学部長 水木 純一郎

ようこそ、関西学院大学理工学部へ。入学おめでとうございます。皆さんは、大学生活に対する大きな期待と少しの不安を持っているのではないでしょうか。これまでの高校生活との大きな違いは、求めていく者には限りなく与えられ、求めない者には与えられないところが大学ということです。何事もスタートが大事です。スタートに立つ心構えが悪いと、それが最後まで影響しますので、理工学部の先輩(1973年理学部卒)として最初に期待を込めて厳しいことを言いましょう。関学のスクールモットーは、“Mastery for service” です。世の中に尽くし、社会に役立つ人間になろうという願いを持ちつつ、己を磨いていく、という意味です。これには覚悟と決心が必要です。いかに奉仕の思いに燃えていても、力ない医者は病人を治してやることはできません。泳げないものは、溺れるものを救うこともできません。人間は弱いものですから自分を甘やかすことは簡単で、怠けていると結局は社会の役に立たない不幸な人間になってしまいます。一方、自分にむち打って努力すれば、才能が創られ社会に必要とされる人間になるでしょう。理工学部で自分を鍛え、才能を創ってください。才能は鍛えて創るものです。生まれつきの天性で努力しないでできる程度のことはちっぽけなものです。鍛えられて創られた才能は、それを活かすことによってその分野で一流になります。どんな分野でも一流にならなければ、隣人や世の中の役に立つことができません。

理工学部で「自然」に学ぶ力をつけてください。そのために自然をよく観察してください。観察した事実から普遍性を見つけ出してください。普遍性の高いものほど広い分野に応用・展開することができます。我々は自然を決して越えることはできませんが、自然から学んだものを賢く利用することはできます。これが理工学です。

理工学部で新しいものにチャレンジする心と知識と体を育ててください。結果を恐れてはいけません。自分の限られた知識で結果や未来を予測して、結局チャレンジをあきらめてしまうようなことはしないでください。その時その時を一生懸命にチャレンジし続けていると予想しなかった新しい結果や未来が拓けてきます。このためにはよき師、よき先輩、よき仲間を見つけ、多くの人とつながりを持って視野を広げてください。理工学部は、国内外の大学、研究機関、企業と協定を結んだり連携したりしており人事交流が盛んです。これを十分に利用するようにしてください。皆さんの学生生活をより豊かなものにしてくれるでしょう。

学生時代は鍛錬の期間です。計り知れない才能は、皆さんの中に十分に開発されないで眠っています。皆さんの学生生活が、それらを開発するために生かされることを期待しています。「あせらず、しかしたゆまず」で学生生活を実りあるものにしてください。そして、皆さんそれぞれの Mastery for Service を見つけてください。

理工学部長 加藤 知

新入学、おめでとうございます。大学での学び、学生生活、みな初めてのことばかりでしょう。未知と遭遇したときのこのワクワクする気持ちを忘れないでください。新鮮さがなくなって、「大学ってこんなものか」と自己規定してしまったとたんに、つまらないものに見えてきます。しかし、本当の大学も学問も固定したものではなく、生き物のように関わり方によって反応のし方が変わります。何もしないと何の反応もないのですが、少しつついてみたらムクムクと起き上がって来たりするので楽しくなってきます。ホモルーデンスである人は、遊び心、冒険心を失わないで、未知に向かって心を開いて来たのです。あなたの働きかけが、あなたの大学、あなたの理工学部を作るのです。

理工学部の研究室の中では、日々未知との出会いが起こっています。皆さんは、4年次にはこれらの研究室のひとつに配属されて最先端の研究に触れることを通して、まだ誰も知らないことを見つけ出だしたり、まだ誰も見たことのないものを創り出したりするにはどうしたらよいのか学びます。「最先端」とか「フロンティア」と言うと聞こえは良いのですが、実際そこは未開拓の「荒れ野」です。道も地図もなく、どんな驚きが潜んでいるかもわからない所なのです。落とし穴に落ちれば、二度と出られないかもしれません。しかし、この「荒れ野」を通って行かないと、本当にワクワクするものには出会えません。入学後の3年間は、この「荒れ野」を切り開くための準備期間です。

最先端の研究でまず最初にしなくてはいけないのは、「なぞ」を見つけることです。「なぞ」なんてどこにでもころがっているように思うかも知れませんが、これを見つけるのが、なかなかむずかしいのです。「なぞ」はそこにずっとあるのに、大抵見過ごされているのです。近代科学の探究が始まるまで、「ものはどうして落下するのだろう」というような疑問は、数学的に解くべき「なぞ」として成立していなかったのです。こんな単純な「なぞ」が発見されるのに何千年もかかってしまうのです。過去のさまざまな知識の蓄積がないと最先端の「なぞ」は見つけられません。また、「なぞ」を見つけてやろうという意気込みも必要です。探そうとしない人の目はふし穴なのです。

次に「なぞ」を解かなくてはならないのですが、これには道具が必要です。ホモファーベルである人は、いろいろな道具を作って来ました。先人の作った道具の活用方法を知ることは、学びの重要な要素です。ここでは、道具によって作られたもの(知識)ももちろん重要なのですが、道具そのもの(方法論)の方が大事です。また、先人の見つけたものの見方、考え方などの道具は種々雑多なのですが、これらのうち普遍性の高いものが大事です。これら普遍性の高いものが基礎と呼ばれているのです。高校では、科学の基礎を学んでいるように思われていますが、実は高校で習ったことは普遍性が足りないので本当の基礎とは言えません。理工学部では、1961年に理学部として創設されて以来、真の基礎教育に努め、それを先端的研究に生かして来ました。基礎は、普遍的で何にでも使える分、使い勝手はあまりよくありませんが、使いこなせるようになるとその威力は非常に大きいのです。基礎を重視してきた理工学部の研究の質の高さは、1件あたりの研究費獲得で国立大学も含めて全国第4位にランキングされたことにも表れています。

もうひとつ先端的研究にとって重要なことがあります。それは、人のつながりです。ただひとり荒野に立つ気概は必要ですが、支えなしに立ち続けることはできません。よき師を見つけること、よき仲間を見つけることは、皆さんの視野を広げ人生を豊かなものにします。自己を鍛えることが、自分のことだけに留まらず、人とのつながりを通して社会へとつながり、関学のスクールモットーである”Mastery for Service”の実現へと展開していくことを期待します。理工学部も、国内外の大学、研究機関と協定を結んで連携したり、企業と共同研究したり、国際的な舞台で情報発信したり、多様な形で外の世界とつながっています。大学は、社会への窓口でもあるのです。自分のために科学を学ぶことから始め、やがて世界のために働く高尚な生涯を目指していただきたいと願います。

Last Modified : 2017-04-10 09:51

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